| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W04-3  (Workshop)

崩壊斜面におけるカラマツ実生の光合成特性とマルチスペクトル画像の関係
Relationship between photosynthesis and multi-spectrum image of larch saplings in collapse slopes

*菅井徹人(北大・農学院), 和田尚之(道総研・林業試験場), 大橋瑞江(兵庫県立大学), 渡部敏裕(北大・農学院), 中田康隆(道総研・林業試験場), 速水将人(道総研・林業試験場)
*Tetsuto SUGAI(Hokkaido Univ.), Hisayuki WADA(HRO), Mizue OHASHI(University of Hyogo), Toshihiro WATANABE(Hokkaido Univ.), Yasutaka NAKATA(HRO), Masato HAYAMIZU(HRO)

斜面崩壊直後の植生定着を評価する上で、土壌地形環境における根系の発達や、成長や生存に直結する光合成活性は重要な形質である。本研究は、崩壊地におけるUAVとリモートセンシングを活用した植生フェノタイピングの可能性を検証することを目的として、個体形質の環境応答を評価し、推定モデルの構築を目指した。
 2019年10月初旬に厚真町高丘地区において、異なる環境の斜面を選抜し、1×20 mの調査ラインを設定した。ライン内の当年性カラマツ実生を対象として、フェノタイピングを行った。現地ではマルチスペクトルカメラで実生を撮影し、画像解析に供した。解析では、近年着目されているRed edgeを含め複数の波長比を算出した。実生は根系ごと掘り取り、実験室内へ移送した後、光合成活性として、光化学系IIの最大量子収率を測定した。根系は直径2mm以下のサイズを細根、それ以外を主根として、形態特性を画像解析から計測した。
 調査の結果、実生個体の乾燥重は斜面間で顕著に異なった。一方、個体の乾燥重と、側根を除く葉・幹・細根の乾燥重との関係は環境条件によらず維持されており、カラマツ実生の発達における高い頑健性が認められた。日射量が高い南斜面に着目すると、個体の乾燥重は斜面内でも大きなばらつきが認められた。南斜面は表土が薄く、個体によっては主根の発達抑制を介して成長が低下していた可能性がある。
 南斜面では主根割合と光合成活性が正の相関にあったが、ほとんどの個体形質と光合成活性の間に特徴的な関係は検出されなかった。また、光合成活性とスペクトルデータの関係は、植生指数であるNDVIや、Red edgeとRedの波長比などで光合成活性との相関がみられたが、推定精度は低かった。一方、UAVで得られた空間情報等を組み合わせることで推定精度は大幅に改善された。以上の結果から、UAVとリモートセンシングの発展により光合成活性の間接的推定の精度を改善できる可能性が示唆された。


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