| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W06-3  (Workshop)

スギ林が森林生態系の物質動態および無脊椎動物群集に与える影響
Plantation of Japanese cedar alters nutrient dynamics and invertebrate community in the forest ecosystem

*太田民久(富山大学), 日浦勉(北海道大学)
*Tamihisa OHTA(Toyama Univ.), Tsutom HIURA(Hokkaido Univ.)

樹木がもたらす栄養塩の空間変異は、ときに集水域レベルといった大きなスケールまでおよぶことがあり、他の動植物の群集組成や生態系機能に大きな影響を与えるとされる。しかし、そのような栄養塩の空間変異が他の生物に与える影響や、そのメカニズムにまで迫る研究は今まであまり報告がなかった。我々のこれまでの研究で、スギなどの特定の樹種が優先している森林では、広葉樹の森林と比較して、土壌および河川水中のカルシウム(Ca)濃度が上昇することが分かってきた。その理由として、スギは有機酸の放出速度といった根の活性が高く、母岩から多くのCaを溶出させ吸収することで、Caの動態を変化させることも分かってきた。そして、集水域にスギ林が優占するような河川では、母岩由来のCaが河川水に多く含まれることが、ストロンチウム同位体比分析を行うことで分かってきた。さらに、そのCa濃度の変化に影響され、外骨格に多量のCaを含む甲殻類の密度が劇的に変化することも分かってきた。つまり、森林植生は母岩-土壌-河川間のCa動態を変化させ、生態系内に生息する無脊椎動物群集にまで影響を与えていることが分かってきました。また、その継続研究として、多く存在するスギの地理変異種を比較したところ、Ca動態に影響をおよぼす効果は変異種間で有意に異なることも分かってきました。本自由集会では、我々の今まで研究を要約し発表する。


日本生態学会