| 要旨トップ | ESJ67 自由集会 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W06  3月4日 17:00-18:30 Room I

植物生理生態ースギの生態学研究におけるモデル生物としてのポテンシャルを考えるー
Plant Physiological Ecology -Potential as a model organism in ecological research of Cryptomeria japonica-

東若菜(神戸大学), 上原歩(玉川大学), 河合清定(京都大学), 才木真太朗(森林総合研究所)
Wakana A AZUMA(Kobe Univ.), Ayumi UEHARA(Tamagawa Univ.), Kiyosada KAWAI(Kyoto Univ.), Shin-Taro SAIKI(Forestry and Forest Products Research Institute (FFPRI))

植物の生理生態に関わる形質は、歴史的起源や系統進化の背景をもちながら、生態系内の種組成や多様性、機能に強く影響を与えている。それらがどのようなプロセスを経て進化や群集形成と結びついているかを理解することは、生態学の大きな課題の一つである。これらの研究を行うためには、1)生態系で主要な構成種であり、2)広い範囲の環境に分布し、3)育成や増殖が容易な生物をモデルにして研究を行うことが有効である。なぜなら、生態系の骨格をなす主要構成種は生態系に与える影響が大きい可能性があり、広域環境に分布すれば構成種の形質に影響する環境要因を検出しやすい。また、遺伝的背景や生育条件を実験により操作できることから、形質にかかるそれらの効果を分離して検証しやすいことが理由に挙げられる。
 日本の国土の64%は森林で覆われており、その森林面積のうち17%はスギの天然林・人工林が占めている。したがって、スギは日本の森林生態系の主要な構成種の一つといえる。スギは東北地方から九州地方まで幅広く分布し、広い範囲の環境に分布している。また、スギは切り枝を使った挿し木が容易であり、クローン個体の作成が比較的容易である。これらの特徴からスギは一連の生態学研究を行えるモデル生物としてのポテンシャルを秘めている。
 そこで、本自由集会では1)スギの系統地理や局所適応(系統・品種の違いなど)について、2)スギの形質のバリエーション(可塑性)について、3)スギ林が森林生態系へ与える影響について現状を把握し、生態学研究におけるモデル生物としてのスギの可能性を検討する。

コメンテーター:小野田雄介(京都大学農学研究科)

[W06-1]
スギの遺伝的系統と局所適応 *内山憲太郎(森林総合研究所), 韓慶民(森林総合研究所), 楠本倫久(森林総合研究所), 中尾勝洋(森林総合研究所), 上野真義(森林総合研究所), 津村義彦(筑波大学)
Genetic lineages and local adaptation in Sugi (Cryptomeria japonica) *Kentaro UCHIYAMA(FFPRI), Qingmin HAN(FFPRI), Norihisa KUSUMOTO(FFPRI), Katsuhiro NAKAO(FFPRI), Saneyoshi UENO(FFPRI), Yoshihiko TSUMURA(Tsukuba Univ.)

[W06-2]
形質データベースによるスギ形質の種内変異の解析 *大曽根陽子(森林総合研究所)
Intraspecific variation of plant traits in Cryptomeria japonica (Sugi) using trait database *Yoko OSONE(FFPRI)

[W06-3]
スギ林が森林生態系の物質動態および無脊椎動物群集に与える影響 *太田民久(富山大学), 日浦勉(北海道大学)
Plantation of Japanese cedar alters nutrient dynamics and invertebrate community in the forest ecosystem *Tamihisa OHTA(Toyama Univ.), Tsutom HIURA(Hokkaido Univ.)


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