| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W08-1 (Workshop)
IPCCやIPBESの報告書等にも明らかなように,生物多様性や生態系機能の状況と変化,および気候変動や土地利用変化との関係性に関する知見へのニーズが高まっている。生態系や生物多様性は『地球観測の推進戦略(平成16年)』において気候や海洋などの分野とともに重要視され,『今後10年の我が国の地球観測の実施方針(平成27年)』でも生態系や生物多様性に関連する環境課題解決に要する具体的課題が指摘されている。これらの課題に対して私たちはどのように取り組んでいけるだろうか?
JaLTERやJapanFlux,JBON,PENなどのネットワークは,データ共有や観測手法の標準化などを通じて多様な環境下の生態系機能や生物多様性の状況の解明を可能にしてきた。さらに生態系機能プロセスの長期観測データは,それ自体が重要な生態学的知見を創出するだけでなく,生態系機能のシミュレーションモデルの高度化をもたらした。また衛星リモートセンシング情報の生態学的解釈や指標開発には地上観測による基盤情報が不可欠である。
生物圏は多様な生物と環境の相互作用系である。上記の課題に応えるためには,生態学や,水文学,微気象学等の各ネットワークの知見を統合するとともに,フィールド研究・衛星観測・モデルの連携によって多地点・広域・長期に実施すべき観測項目をデザインすることも求められる。気候変動が生態系に及ぼす影響の監視とデータや知見流通を推進するには生態系観測サイトのResearch infrastructure化が望まれる。Network of Networksを基盤とした観測から統合的知見の創出,人材育成まで網羅するシステムの構築により,地球温暖化時代環境課題解決への貢献の促進が期待される。しかし同時に環境政策の観点から必要とされるシステムの議論も必要である。