| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W09-2 (Workshop)
ニセアカシア(ハリエンジュ)の河畔植生への侵入と,その問題点を種組成の観点から述べる.
長野県安曇野市を流れる犀川の河畔で様々な発達段階の群落を調査した.ニセアカシアを含む群落,含まない群落があり,107地点で176種が記録された.この107地点を階層的クラスター解析(Hornの距離, Ward法)に掛け,認識されたグループごとに,どのような種が出現する傾向にあるかを,Defrene & Legendreの指標種分析で明らかにした.高木林等では,同じ種が異なる階層に何度も出現することがある.そのため複数の階層に出る1種の被度を最大頻度で代表する場合,それぞれ別々の被度を用いる場合の両方で解析を行った.
各層の被度を最大被度で代表させた場合,クラスターは大きく2つ,ニセアカシアを持つグループと持たないグループに別れた.一方,各階層の被度を個別に扱う方法では,クラスターが2つに分かれる際,ニセアカシア高木林と,それ以外の群落,すなわち従来の河畔植生に別れた.ニセアカシアの被度は,特に高木林で高いとはいえ,こうした形でクラスターが分かれるということは,ニセアカシア群落,特に高木林で特徴的な種がともに出現していることを示唆する.ニセアカシア高木林で指標種を見ていくと,ニセアカシア以外に,アオツヅラフジ,アケビ,ヤマウグイスカグラ,エノキなど,森林生の植物や木本植物が多いことがわかった.これはニセアカシアによる立地の安定化や窒素分の供給などが原因と考えられ,河畔植生を変化させてしまうことが問題と考えられる.一方,カワラニガナ,カワラハハコ,カワラサイコなど,礫河原特有の植物が生育している草本群落にニセアカシアの幼木が侵入しており,将来的な課題を示す.また,ヤナギ高木林の下層でニセアカシアは生育できるが,逆は成り立たず,遷移はニセアカシア一方向である.こうした点がニセアカシア侵入の問題点と考えられた.