| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W09-3 (Workshop)
草原群落は環境条件が極端に厳しい立地や、自然的または人為的な攪乱下で成立する群落であり、階層構造は比較的単純で、群落内の光環境条件も明るい。これらの要因から、草原群落は攪乱耐性でオープンなハビタットに適応した外来植物の侵入や定着を受けやすい特徴がある。特に生産的な目的で維持管理されてきた半自然草原や畦畔草地では、外来植物の侵入、定着により、在来群落の組成や構造に変化がもたらされている。
本州中部を代表する草原景観を有する霧ヶ峰高原では、観光道路建設時の1970年代からヘラバヒメジョオンやメマツヨイグサ等の外来植物が侵入、定着し、これらの優占帰化が継続してきた。両種については駆除実験から、一定手法の刈り取り処理での駆除の効果が認められているが、分布面積が広く、優占度も高いことから、現在でも問題は解決されていない。また、遷移が進行したススキ群落等において、多様性の高い草原を復元させる目的で刈り取り処理を実施した場合、草原性植物種の種数や優占度が増加したものの、一方では同時に、両外来種の新たな侵入、定着が確認され、植生管理の際には、外来植物の駆除作業を並行させる必要性が考えられた。
次に、本地域では特定外来植物のオオハンゴンソウが約20年前に侵入、定着し、高層湿原近傍や特定地域で優占帰化し、分布を拡大してきた。本種の優占群落では特に組成の多様性が低下し、高層湿原への分布の拡大が懸念されている。地域での本種の駆除実験によって、掘り取り処理による駆除手法は提案されており、霧ケ峰みらい協議会(県事務局)や諏訪市教による駆除事業が一部では成果を挙げているが、分布拡大速度は早く、早急な対応が必要である。
外来植物の草原群落への定着は、生態系を構成する昆虫類にも影響することが懸念される。これについては中間温帯の畦畔草地での植物とチョウ類やハナバチ類等、昆虫類との関係性の影響について話題提供する。