| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W09-5 (Workshop)
外来植物は在来植物に、資源をめぐる直接的な競争による影響だけではなく、植食者などの第三者を介した負の影響も与えうる。しかし、直接的な競争による影響と間接的な影響の両方を考慮した場合に、周囲の外来植物が在来植物に与える影響やメカニズムについて十分に理解されていない。また、環境によってこれらの影響は異なると考えられる。本研究では、セイタカアワダチソウ(以下セイタカ)とセイタカと同所的に生育する在来キク科植物を材料に用いて、セイタカが植食者を介して在来キク科植物に与える影響が、1) 原産地(北米)と侵入地(日本)で異なるか、2) 外来植食者のアワダチソウグンバイの分布の有無でどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。
日本では、セイタカと混植した場合に在来植物上のアワダチソウグンバイによる食害が増加し、さらに2年目には、直接的な影響によって在来植物のサイズが抑制されたことで、在来植食者も含めた食害が増加した。また、セイタカと混植した場合に在来植物の葉数増加率や花数が減少し、さらにアワダチソウグンバイの分布地では花数がより減少した。一方で、北米では、セイタカとの混植が食害を増加させた植物種も見られたものの、植物サイズの低下は見られなかった。これらのことから、外来植物は在来植物と進化的な歴史を共有していないことから生じる直接的な競争による負の影響に加えて、外来植食者の侵入によって負の影響が強まる可能性が示された。在来植物を取り巻く周囲の植生としての外来植物が与えうる影響について、複雑に絡み合う複数の要因を紐解くことで理解を深めたい。