| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W10-1  (Workshop)

世界の島嶼生物学と日本の島々
Global Island Biology and Islands of Japan

*渡邊謙太(沖縄高専), 水澤怜子(福島大学), 阿部晴恵(新潟大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*kenta WATANABE(NIT, Okinawa KOSEN), Reiko MIZUSAWA(Fukushima Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

 世界の島嶼生物学は、DarwinやWallaceらによる研究に始まり、 MacArther-Wilsonの種数平衡理論、CarlquistのIsland Biology等、いずれも島の生物を研究対象としながら、生態学や進化生物学、生物地理学の各分野において大きな影響を与えてきた。世界の島嶼生物学の研究史では、ハワイ諸島、ガラパゴス諸島、カナリア諸島などの他に、日本の小笠原諸島の例が挙げられることが多い。しかし、日本には他にも多くの島嶼生物学の対象となりうる島が存在し、実際に多くの研究がなされている。
 日本列島は、北海道、本州、四国、九州の4島とその周辺の島々だけではなく、さらに北方に亜寒帯の千島列島、南方には亜熱帯の南西諸島、小笠原諸島等が含まれ、幅広い気候条件下に、大小様々な6千以上の島が存在する。日本の島の多くは大陸島であるが、伊豆諸島、小笠原諸島、大東諸島等の海洋島も少なくない。それぞれの島は、面積や地理的背景、成立年代、気候、種組成などが異なり、その上、生物相が高い精度で調査されていることから、島嶼生物学研究の対象としては絶好の材料である。さらにこれまで行われた様々な生物学的研究も島嶼生物学という観点から見直すことで新たな価値が見いだすことも期待できる。一方、現在の世界の島嶼生物学で大規模に進められている研究、例えば生物間相互作用(種子散布や送粉共生)のネットワーク解析等は日本ではまだあまり進められていない印象がある。このように世界の島嶼生物学の潮流の中で日本の島々の特徴とこれまでの研究を見直すことで、日本から発信すべき島嶼生物学の新たな可能性が見えてくるのではないだろうか。
 島の生物学を扱う国際会議Island Biologyの第4回大会が2021年ニュージーランドで開催される。この学会に多くの日本の研究者が参加することで、日本における島嶼生物学の機運を高めたいと考えている。


日本生態学会