| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W10-4 (Workshop)
海洋島では大陸や大陸島から移入・定着した生物のみが群集を構成し、大陸とは異なる種間関係が構築される。送粉共生系はその好例である。海洋島では長い口吻をもつ大型ハナバチとチョウが低頻度で、小型のハナバチが優占すると報告されている。そのような送粉者群集の組成の変化は、大陸において大型ハナバチやチョウによって送粉されていた花の進化を促進する。伊豆諸島においても本州と比べて長口吻送粉者が低頻度であり、他の送粉者に適応した形に花形質が変化した例が報告されている。これらの研究は1種の植物種を対象としており、送粉者群集の組成の変化が植物群集の花形質に与える影響についてはわかっていない。そこで本研究では、本州と伊豆諸島の海浜植物群集における優占植物19種(長花筒:8種、中花筒:3種、短花筒:4種、花筒なし:4種)について、本州と伊豆諸島間で花形質(花弁長、花筒長、雌蕊長、雄蕊長)の比較を行った。
その結果、伊豆諸島では長花筒をもつ種は、本州と比較して1つ以上の形質が長いことがわかった。一方で中花筒または短花筒をもつ種は多くの形質が伊豆諸島では短いことがわかった。また、花筒なしの花では多くの形質で本州と伊豆諸島間の差はみられなかった。このように花筒長によって異なる花形態の群集レベルの変異パタンを見出した。いくつかの種では、花形態と訪花した送粉者の平均口吻長が相関しており、海洋島における送粉者のニッチシフトが花形態の変化を引き起こしたことが示唆された。我々の研究は多くの海浜植物が海洋島の長口吻送粉者が少ない送粉者群集に適応していることを示唆している。