| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W10-5 (Workshop)
外来種の侵入が引き起こす生物多様性の低下は世界各地で深刻化している.とくに島嶼生態系においては,在来種は捕食や競争への適応を欠き,外来種による在来種へのインパクトが甚大化することが多い.多くの島から形成される日本においても外来種の問題は深刻である.
たとえば,かつて多くの島々に放獣されたニホンイタチは,在来爬虫類の密度を大幅に減少させているが,国内外来種であることから国による対策の対象からは外れている.ペット由来のネコは,放し飼いが慣例的に許容されている唯一の家畜であり,野放しネコを管理する法的枠組みがないまま放置され,ほぼすべての有人島で野外に定着し,在来種を捕食している.国内外来種やペット由来動物など,外来種対策の制度でカバーできていない外来種問題が多いことが日本の抱える問題の特徴の一つである.
一方で,日本の外来種対策は近年になって大きな成果が得られている.奄美大島のマングース対策は,根絶までの最終ステージに至っている.小笠原のノヤギ対策では複数の島での根絶を成功させた.西表島のバイオセキュリティー対策は,15年もの監視の継続によって,オオヒキガエルの定着を阻止し,シロアゴガエルの侵入を早期に発見し迅速な対応で根絶に成功した.このように,侵入前の対策から定着個体群の対策まで一連の成果が日本において出つつある.これらの成功は,日本の外来種対策全体の底上げにつながるだけでなく世界の外来種問題にも貢献しうるものであり,ローカル対策の枠を超えて成果のモデル化を進め日本から積極的に発信していくことが重要である.