| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W11-2 (Workshop)
女王アリは羽化後まもない時期にしか交尾をせず、その時に受け取った精子を精子貯蔵器官「受精嚢」に寿命が続く限り貯蔵し、産卵時に必要な数の精子のみを取り出し受精させている。女王アリは他昆虫と比較して極めて長寿であることが知られており、多くの種で10年以上、記録では29年生存する種も報告されている。これはつまり、女王アリは巨大コロニーメンバーを生産するだけの大量の精子を常温で長期間生存させているということである。通常、動物のオスの精子は射出後、数時間から数日で著しく劣化し、受精能力も低下するため、女王アリの精子貯蔵能力は極めて特殊であるが、その仕組みを解明した研究は皆無である。
演者は、女王アリの長期間の精子貯蔵メカニズムを明らかにすることを最終目標に、まず最初に、精子を直接保護している受精嚢の機能に着目した。本発表では、受精嚢内での貯蔵精子の状態や、受精嚢で高発現している遺伝子などについての解析結果を紹介したい。