| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W15-1 (Workshop)
絶滅危惧種を長期的に保全するためには、専門家以外の理解・サポートが必要不可欠である。そのため、絶滅危惧種の保全に関わる団体は、市民への普及啓発活動に大きな労力を費やしている。しかし、これまでは主に手法上の制約から、普及啓発の効果を大規模に定量的に評価することが行われていなかった。つまり、どういう情報・手段が絶滅危惧種への関心を高めることができるのか、そして関心の高まりが保全につながるか、などが未検証のままであった。
そこでわれわれは、絶滅危惧種の関心を高める媒体として、動物園や動物アニメ・自治体のシンボルなど、市民が絶滅危惧種を目にする様々な媒体に注目した。そして、インターネットの検索数やSNS、オンラインサーベイなどを組み合わせて検証することで、市民の関心を全国スケールで詳細に定量化した。さらに、実際に行われた寄付の記録や寄付サイトへのアクセス、そして鳥類繁殖分布調査データを解析することで、市民の関心の高まりが、実際の保全を促進するのかどうかも検証した。
解析の結果、いくつかの媒体は絶滅危惧種への関心を大きく高める普及啓発の効果があることが分かった。その中には、関心を高めるだけなく、寄付を増やすなど実際の保全につながる行動を促進する効果が見られたものもあった。これらの知見は、より効果的な普及啓発の促進と、絶滅危惧種への長期的な保全につながるものと期待される。