| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W19-2  (Workshop)

ソバの送粉サービスのレジリエンスをうみだす小型昆虫
Small insects facilitate resilient pollination services in buckwheat

*林将太(東大・農), 滝久智(森林総研), 宮下直(東大・農)
*Shouta HAYASHI(The Univ. of Tokyo), Hisatomo TAKI(FFPRI), Tadashi MIYASHITA(The Univ. of Tokyo)

 近年、ミツバチ以外にも野生昆虫による送粉サービスの重要性が認識を受け、評価されてきている。野生昆虫がもたらす送粉者の多様性はニッチの相補性やサンプリング効果によって送粉サービスに正の効果をもたらすほか、気象条件や景観要因への応答の違いにより、送粉者減少の要因である生息地改変や気候変動に面しても送粉サービスを安定化させる機能を持つ可能性も示唆されてきている。
 気象条件や景観要因に対する応答についての既存研究の多くは、主要な送粉者とされるミツバチ、ハナバチ類や中型から大型の昆虫に着目しており、それ以外の分類群や小型の昆虫、さらに作物の生産性との関係性にも着目した研究が必要とされている。
 そこで、本研究では分類群、体サイズに着目して野生の昆虫の結実率への貢献、気象条件、景観要因への応答を明らかにする目的で、ソバにおいて袋掛け実験による体サイズ別の結実率への貢献度調査、そして訪花昆虫観察調査を行った。
 調査結果から、小型の昆虫は大型の昆虫と同程度結実率に貢献していることが明らかになった。また、小型昆虫の中でも高い訪花頻度を示したアリについて排除実験を行った結果、アリも送粉に貢献していることが明らかになった。気象条件に対しては分類群ごとに異なった応答を示し、大型昆虫は悪天候による影響を受けやすい一方、小型昆虫は天候によらず安定して送粉に寄与する可能性が示された。周辺環境に対しても分類群ごとに異なった応答を示し、大型昆虫は森が多く、畔に花が多い畑に多いこと、小型昆虫はそれらの要因には影響されず分布している可能性が示された。
 これらのことから、ソバには送粉効率がいいとされる大型昆虫やハナバチ類以外にも多様な小型の昆虫が訪れ、送粉に寄与していることが明らかになった。さらに、気象条件や周辺環境に異なった応答を示すことで送粉サービスのレジリエンスをうみだしていることが支持された。


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