| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W19-3 (Workshop)
カキノキ(Diospyros kaki,以下カキ)は日本国内で年間生産量20万トンと越える主要な果物の1つである。カキは一般的に雌雄異花であるため、結果するためには送粉が必要である。しかしながら日本におけるカキの訪花昆虫に関する報告は少なく、1960年以前の3報のみである。報告されている訪花昆虫種は地域によって異なり、トラマルハナバチ、コハナバチやニホンミツバチが報告されている。これらの報告では訪花者の記録のみで送粉しているかについては明らかになっていない。そこで、初めに本研究では、広島県東広島市安芸津におけるカキの送粉者の特定を行なった。その結果、コマルハナバチが最も送粉に貢献していることが明らかになった。本調査地ではカキの開花前からカキの樹下にシロツメクサが繁茂・開花している。そこで、カキとシロツメクサで訪花昆虫が行き来しているかについて調査した。調査内容はそれぞれの訪花昆虫相調査および体表付着花粉の計数を行なった。その結果、カキに訪花していたコマルハナバチには、シロツメクサとカキと双方の花粉が付着していた。このことから、コマルハナバチはカキの訪花前にシロツメクサを訪れていることが示された。一方で、シロツメクサに訪花していたコマルハナバチなど体表にはシロツメクサ花粉のみが付着していた。以上のことから、果樹園下草であるシロツメクサはコマルハナバチにとって、カキが開花するまでの餌資源としての役割を果たしている可能性が示唆された。本調査園地は二次林に囲まれ、さらにその周辺には棚田や畑などの里山が広がる。このような景観があることにより、カキの訪花昆虫であるコマルハナバチが維持することができると考えられる。