| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W24-2  (Workshop)

東北アジアのコケモモ-トウヒクラス針葉樹林の植生地理
Vegetation geographical viewpoint of Northeast Asian Coniferous forests of Vaccinio-Piceetea

*中村幸人(東京農業大学)
*Yukito NAKAMURA(Tokyo Univ. of Agriculture)

コケモモ-トウヒクラスはユーラシアから北米の北方帯と中緯度山岳に成立する針葉樹林が体系化され,林床のゴゼンタチバナ,リンネソウ,コイチヤクソウ,コフタバラン,ヒメミヤマウズラ,スギカズラ,ウサギシダなどを共通種としている.しかし,大陸間で地域性のある針葉樹類に注目してRivas-Martínezら( 1999 )のように北米にLinnaeo americanae-Piceetea marianaeをまとめ,欧州のVaccinio-Piceetea abietisと東北アジアのAbietetea sachalinensio-mariesii n.n.をクラス群に位置付ける考えもある.東北アジア沿海部の常緑針葉樹林はシラビソ-トウヒオーダーにまとめられ,それ以北,あるいは大陸側にはイソツツジ-グイマツオーダーのグイマツ林,それ以南には寒温帯の汎針広混交林が広がる.大陸ではチョウセンゴヨウとモンゴリナラのアムールシナノキ-チョウセンゴヨウオーダー, 北海道ではトドマツとミズナラのコナラ-ミズナラオーダーに相当する.低温・乾燥した大陸的な最終氷期にはこれら4オーダーが本州以南にも広がっていたと思われる.シラビソ-トウヒオーダーには沿海州にトウシラベ-エゾマツ群団,サハリンと北海道にエゾマツ群団,本州・四国にオオシラビソ群団の3群団がある.トウシラベ-エゾマツ群団とエゾマツ群団にはエゾマツをはじめ,イワツツジ,コキンバイ,ミミコウモリ,オクヤマシダが共通する.また,ハクサンシャクナゲとツルツゲがシホテアリンに隔離遺存する.海洋性気候下のオオシラビソ群団は氷期には分布が限られていたと思われる.オオシラビソは同じアマビリス節のアマビリスモミ林の属する北米西部沿海部のアメリカツガ群団と組成が似ている.オオシラビソ群団にはシラビソ-オオシラビソ群集とその地域群集に四国・紀伊に隔離遺存するシラビソ群集と日本海側に進出したオオシラビソ群集がある.


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