| 要旨トップ | ESJ67 自由集会 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W24  3月7日 18:45-20:15 Room J

植物社会学研究会-植物社会学の中の植生地理
Vegetation geography as the subdivision of Phytosociology

中村幸人(東京農業大学), 村上雄秀(国際生態学センター)
Yukito NAKAMURA(Tokyo University of Agriculture), Yuhide MURAKAMI(IGES-JISE)

 植物社会学研究会では企画集会や自由集会で話題提供を行ってきた.今回は「植物社会学の中の植生地理」という話題を取り上げている.植物群落の分布を決定する二大要因は生態分布と地理分布にある.生態分布は気候,地形,土壌などの無機的な環境要因の規制により分布が決まる.地理分布では気候変動などによる植生変遷の結果,今日の分布があり,地史的な背景の中で植物群落は分化・成立していく.植物社会学的な研究の多くは生態分布に関するものが多く,植物群落の分布に関して気温・降水量や積雪,また,微地形や土壌との関係,人為的影響によって明らかにされている.しかし,研究を広域に展開すると,組成的に同じ分布要素で植物群落の系統を地理的に可視化できる.また,地理的な植物群落の隔離分布の程度を組成から理解することができるようになる.例えば,高山帯には複数のクラスの植生が成立している.その分布要素の構成比には違いが見られており,氷期の介在など過去の気候変動に伴う植生変遷を視野に入れて高山植生の成立要因を明らかにすることが求められる.また,沿海州と北海道と本州では北方帯(亜高山帯)気候のもとに異なる針葉樹林;トウシラベ-エゾマツ林,トドマツ-エゾマツ林,シラビソ-トウヒ林が分布している.これらの植生間には組成的な類縁性があり,地史的な背景にある植物群落の分化を地理的に考察する必要がある.また,沿海州と日本列島の冷温帯では,チョウセンゴヨウやヤエガワカンバといった同種が海峡を隔てて隔離分布しているが,大陸間で異なる植物群落の構成種となっている.これらの植生変遷を明らかにするには,過去の気候変動への適応が植生の分化を促したことを考えていく必要がある.

[W24-1]
北アルプス後立山連峰北部の高山植生の分布要素 *石田祐子(神奈川県立博物館)
Phytogeographical patterns of the components of alpine vegetation in Northern part of the Ushiro-tateyama Mountain Range, Central Japan *Yuko ISHIDA(Kanagawa Prefectural Museum)

[W24-2]
東北アジアのコケモモ-トウヒクラス針葉樹林の植生地理 *中村幸人(東京農業大学)
Vegetation geographical viewpoint of Northeast Asian Coniferous forests of Vaccinio-Piceetea *Yukito NAKAMURA(Tokyo Univ. of Agriculture)

[W24-3]
北東アジア大陸部との比較からみた日本列島の冷温帯夏緑樹林の植生地理 *設樂拓人(琉球大学)
Phytogeographical consideration of temperate summergreen forests in the Japanese archipelago compared with Northeast Asian continent *Takuto SHITARA(University of the Ryukyus)


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