| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W26-1 (Workshop)
生物群集は、異なるスケールで働く局所的・地域的プロセスによって形成される。本講演では、これまで群集集合研究が明らかにしてきた両プロセスの相対的な重要性や、その重要性がどのような要因で変化するかを紹介する。また、これまでの知見をより上位の栄養段階群集へと拡張するアイデアについて、以下の研究を紹介する。
局所的・地域的プロセスの相対的な重要性は群集集合の時間とともに変化することが知られてきた。分散制限や群集の飽和というメカニズムによって、集合初期には地域的なプロセスが卓越し、集合が進むにつれて局所的なプロセスが群集構造を決定すると考えられる。しかし、こうした知見・理解は単一の栄養段階群集を想定しており、資源が集合過程の間で一定であるという仮定に基づいている。本研究では、従来の知見が、資源(:下位の栄養段階群集)が時間的に変動する上位の栄養段階群集についても当てはまるかを実証的に検証した。
東京都町田市の半自然草地において、実験的な撹乱(草刈り)後の植物–植食性昆虫(バッタ、カメムシ、コウチュウ)群集を定期的に観察し、昆虫群集の形成における局所プロセスの重要性(植物群集からのボトムアップ効果)が撹乱後の時間とともにどのように変化するかを調べた。
植物・昆虫群集ともに季節的な種組成の変化が見られたにも関わらず、植物群集と昆虫群集のβ多様性の相関は、撹乱後の時間とともに強くなっていく傾向が見られた。つまり、資源が同時に変化していたにも関わらず、植食性昆虫群集の集合における局所的なプロセスはだんだんと強くなっていた。このようなパターンは、従来考えられてきた分散制限、群集の飽和というメカニズムでは説明されなかった。