| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S01-1  (Presentation in Symposium)

食物網、共生ネットワーク、そして生態系の再生へ
Food webs and symbiotic networks: integration of knowledge towards ecosystem restoration

*東樹宏和(京都大学)
*Hirokazu TOJU(Kyoto University)

生物種間の相互作用が織りなすシステムの振る舞いは、科学の対象として最も複雑で魅惑的なものと言っても決して過言ではないっ!(と講演者は常日頃感じている)。ハイ・スループットDNA分析が気軽に行えるようになった現在、研究設計とサンプル処理に工夫を凝らせば、多様な生物群を対象として、生物間相互作用の研究を展開できる。講演者の研究チームでは、「全生物群の情報を盛り込んだ、究極の相互作用ネットワーク」を分析することを目指し、植物と真菌・細菌の共生ネットワーク構造、ヒト腸内細菌群集構造、クモや土壌動物を中心とした食物網動態、土壌動物と微生物の共生ネットワーク構造、魚類養殖システムの微生物叢動態、細菌実験群集内の相互作用動態、といった研究テーマに取り組んでいる。本講演では、上記の事例を紹介しながら、数百・数千種以上の種(もしくは、OTU/ASV)を含むデータを基にして今後どんな研究が展開できるのかを議論する。early-warning signalsやempirical dynamic modeling等に関する分析手法を応用すれば、生物種間の関係性(相互作用係数)や群集の安定性が刻々と変化する様を解明するとともに、大規模な群集構造の変化が起こる前にその予兆を検知することもできるようになりつつある。こうした、生態系を扱う学問における質・量の飛躍的向上は、人類に何をもたらすのであろうか? 地球上の至るところで生態系の劣化が進行する中、持続可能な農業生態系を設計・実装しつつ、自然生態系の再生を加速させるために何が必要か、議論したい。


日本生態学会