| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S02-5 (Presentation in Symposium)
土壌中の有機炭素は土壌微生物による分解過程を経てCO2として大気中に放出される。この現象は微生物呼吸と呼ばれ、人間活動に由来するCO2放出量の約7-10倍に相当する。また、土壌中にはCO2を基質としてCO2の28倍の温室効果を持つCH4を合成するメタン生成菌、CH4を炭素源・エネルギー源としてCH4の分解に寄与するメタン資化菌、硝化・脱窒作用を通じてCO2の296倍の温室効果を持つN2Oを発生する細菌など、気候変動をもたらす3種の温室効果ガス(CO2、CH4、N2O)の生成・分解に係る多くの種が存在する。温暖化や土地利用転換に伴うこれら土壌微生物相の変化は地球規模の温室効果ガス収支にも多大な影響を及ぼすため、その評価は気候変動の将来予測において重要である。しかしながら、従来の培養法を用いた土壌微生物相評価では、僅かな土壌中に数億個体が存在する土壌微生物の環境変動に対する応答を正確に把握することは極めて困難であった。
本発表では、アジアモンスーン域の多様な森林・農地生態系を網羅する国内外のチャンバー観測サイトで採集した土壌を対象に、遺伝解析手法を用いて、(1) 土壌微生物量、(2) 土壌微生物の種組成、および(3) 土壌微生物機能を把握することで、温暖化や土地利用転換に伴う環境変動に対して土壌微生物相がどのような応答を示し、結果として土壌を介した温室効果ガス収支がどう変動するのかについて議論する。