| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S04-1 (Presentation in Symposium)
火山島である三宅島は、2000年の大規模な噴火によって、森林の約6割が影響を受けたとされる等、島の生態系に大きな影響が生じた。植生の回復は、降雨による泥流発生等の二次災害の防止や、バードアイランドと称される島の豊かな自然を活かした観光再生においても重要である。ところが、三宅島では2000年噴火後も植物の生育を阻害する大量の火山ガスの放出が継続し、植生の回復を遅らせるだけでなく、二次的な植生被害を生じてきた。近年になってようやく、有毒な火山ガスの放出量が低減し、火口周辺までの登山ルートの復活が計画される等、観光推進がなされている。
そこで本研究では、時系列的に観測された衛星画像を用いて植生をモニタリングすることにより、三宅島2000年噴火後20年間の植生回復状況を改めて評価することとした。このため、1994年から2020年にかけて、JERS-1/OPS及びTerra/ASTERによって観測された31時期の画像を選択し、これらにATCOR2/3を用いて放射量補正及び幾何補正を行った。得られた画像の多くは、雲や噴煙による影響が見られ、部分的に分析可能な情報を持たなかったため、時期的に連続した複数画像を最大NDVI法によってまとめ、噴火前から噴火後20年後までを7時期のNDVI衛星画像データセットに集成した。これらのNDVI画像をもとに、ISODATAクラスタリング法により教師無し分類を行うことで、NDVIを指標とした植生の回復パターンを分類してマップ化して示した。
分類された画像から、噴火後もNDVIの値が相対的に高く、噴火に伴う植生被害が相対的に最も少ない地域(これらの地域は概ね樹林地を示していた)では、NDVI値の微減が続いていたものの、2019年以降は回復に転じていた。2017年以降については、ほとんどの地域でNDVIが増加傾向を示し、とりわけ火口付近の裸地であった地域において、草原が回復してNDVIの値が著しく増加していた。総じて、火山ガスの放出量が低減したことによって、三宅島全体で植生回復が進行しつつある様子が認められた。