| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S04-2  (Presentation in Symposium)

三宅島2000年噴火後20年間の植生回復過程
Vegetation recovery for 20 years after the 2000 year eruption of Miyake-jima Island

*上條隆志(筑波大学)
*Takashi KAMIJO(University of Tsukuba)

三宅島は2000年夏に大噴火した。島の生態系は多大な影響を受け、森林の約60%にあたる2,500 haが強く破壊された。本研究では、2000年噴火後の植生回復を経年的な直接観察により明らかにすることを目的とした。
噴火後1年経過した2001年に三宅島の南西部に11地点の固定調査区(10 m × 10 m)を設置した。なお、2001時点では、中腹以上は立入禁止であったこと、多くの林道が通行不可能であったため、最もアクセスのよい南西部を調査地とした。11地点の調査区は、ほぼ裸地化した場所から被害の小さい森林まで含むようにした。なお、噴火前はタブノキ・スダジイからなる常緑広葉樹二次林であった。植生調査は、2001年から2020年まで、2017年と2019年を除く毎年行った。
20年間の特徴的な変化として、(1) 噴火から1-4年間は、タブノキの落葉など植生の退行が認められたこと、(2) 初期回復を担ったのは、生残した樹木などの再生、ハチジョウススキ・オオバヤシャブシの侵入であったこと、(3) 噴火から5年以降は、ハチジョウススキが優占したこと、(4) 噴火から12年以降、樹木の回復が顕著になったこと、(5)出現頻度は低いが、ユノミネシダ、マツバランなどの噴火前には見られなかった種が出現したこと、などが挙げられる。植生退行、ハチジョウススキの一時的な優占、ユノミネシダの出現といった特徴的な変化には、火山灰の堆積による攪乱だけでなく、噴火以降継続した二酸化硫黄ガスの影響が大きいと考えられる。


日本生態学会