| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S04-3 (Presentation in Symposium)
2000年噴火後の三宅島で、発表者らは2002年から2020年にかけて、島内の林道等に沿って設定したルートでロードサイドセンサスを反復して実施し、島内の鳥類群集の変化を追跡してきた。鳥類の種の豊富さや個体密度は樹木植被率と正の相関を示し、かつ、ホオジロなど開けた場所に好んで出現する種を除くと、鳥類相の変化のパターンは入れ子構造を示した。すなわち、より多くの種が出現する場所の鳥類相はより少ない種のみが出現する場所の鳥類相を包含し、より多くの地点で記録された鳥類種の分布域はより少ない地点でのみ記録された鳥類種の分布域を包含した。この全体的な傾向は噴火後約20年間変わらずに認められるが、細かく見ると、噴火後の時間の経過に伴っていくつかの変化が鳥類の種組成に認められる。鳥類と樹木植被率との関係においては、噴火後5~8年にかけて植被が少ない場所でもある程度の鳥類個体が記録された点が注目される。その一時期を除き、植被がない場所では鳥類は記録されていないが、近年、島の中腹以上においても植被の回復が進んでおり、鳥類が全く記録されない場所は現在はほぼなくなった。さらに、噴火後一貫して、カラスバト、ヤマガラ、ミソサザイなど、同島の常緑広葉樹林に特徴的に見られる種の個体が減少し、住宅地を含む幅広い環境の土地に分布するヒヨドリやメジロ、林縁や草地を好むホオジロなどの種の個体が増える傾向が見られたが、2012年以降ホオジロの個体数は減少に転じ、さらに2019年になって、イイジマムシクイやコマドリなど常緑広葉樹林を好む種の一部については、個体数が減少から増加に転じたことを示唆するデータが得られた。一方、ヤマガラなど個体数が少なくなった種については、個体群の保全のための具体的な方策が早期に必要と考える。