| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S04-4  (Presentation in Symposium)

2000年噴火火山灰堆積地の土壌生成
Soil formation process  the 2000 year volcanic ash deposits

*田村憲司, 浅野真希(筑波大学)
*Kenji TAMURA, Maki ASANO(University of Tsukuba)

【はじめに】
 わが国は世界有数の火山国であるが、火山噴火後の火山遷移に伴う火山放出物由来土壌の土壌生成過程については、研究例が非常に限られている。火山遷移の研究対象地として三宅島はいくつかの報告がなされ、また、火山遷移に伴う土壌発達についても報告されている(Kato et al., 2005)。発表者らが2007年、2011年、2019年に調査を行った3地点における土壌の一般理化学性分析および微細形態学的特徴の観察を行い、その結果を経年比較することで、発達段階の異なる地点での短期間での植生と土壌の初成土壌生成過程を解明することを目的とした。
【調査地および方法】
 三宅島西部の伊ヶ谷地域の火山灰の厚さの異なる3地点(IG7、IG8、IG9)を研究対象地とした。土壌断面調査は、2007年、2011年、2019年に行った。土壌試料を採取後、土壌の物理性(仮比重、三相分布、透水係数)の測定、化学性(pH、CEC。交換性陽イオン量、有機炭素量、全窒素量)の分析、土壌微細形態観察を行った。
【結果および考察】
 噴火後、7年後までの土壌断面には、各地点とも土壌層位としての発達は見られず、火山灰堆積層が一番薄い地点であるIG9において、土壌の粒団がわずかに確認できたにすぎなかったが、11年目の土壌調査では、同地点においてA層の発達が確認できた。20年目の調査においては、各地点とも土壌の最表層において、団粒構造が確認でき、A層の発達がみられた。火山灰が一番暑く堆積したIG7においては、石膏の盤層が2000年噴火以降形成され、その上にススキの根系がマット状に形成されるのみであったが、年代が経つにつれて、盤層が破壊され、根系の侵入とともに、土壌構造の発達が見られるようになった。
 以上のことより、植物根系の発達とともに土壌化が進行し、10数年で最表層の土壌構造の発達とA層が形成されることが明らかとなった。


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