| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S04-5  (Presentation in Symposium)

2000年噴火火山灰中の微生物群集の構造と動態変化
Change of structure and dynamics of microbe community in the 2000 year volcanic ash

*太田寛行, 西澤智康(茨城大学)
*Hiroyuki OHTA, Tomiyasu NISHIZAWA(Ibaraki University)

土壌は元素循環の場であり、その主要な担い手は微生物である。したがって、新生火山灰中の微生物生態系の動態変化は初成土壌生成の様相を示すものと言える。微生物生態系は、菌数、群集構造、元素循環に関わる遺伝子構成の3つで特徴付けられ、これらは有機物の集積と相互に関係する。本発表では、約20年にわたって採取した2000年噴火火山灰試料のメタゲノム解析等の結果をもとにして微生物群集の動態を考察する。調査地点は、雄山山頂付近で火山ガスの影響が強く植生回復が遅かった地点(OY)と雄山中腹の森林地帯で植生回復が比較的速かった地点(IG)及び噴火の影響を受けなかった森林土壌の地点(CL)を回復レベルの対照とした。これまでの結果の概要は、(1)火山灰への微生物定着は速く、噴火堆積後約半年の試料において104/gの培養可能菌数が検出され、このレベルはCL試料の1/104に相当した。(2)火山灰に定着するパイオニア微生物叢は独立栄養性で窒素固定活性をもつ鉄酸化細菌(Leptospirillum, Acidithiobacillus)が主体であり、両細菌による鉄の酸化還元サイクルと共役して炭素と窒素の集積が始まると推察された。(3)OY試料では、独立栄養性から従属栄養性の微生物生態系へのシフトが約10年間かけて起きた。窒素固定細菌群集の従属栄養性細菌へのシフトはより速く、噴火堆積後6.6年までには起きていた。一方、地上部からの植物由来の炭素流入が起こりやすいIG試料では、従属栄養性細菌叢へのシフトが速く、形成された細菌叢の門レベルの分類群はCL試料の場合と類似していた。以上より、三宅島火山灰の無機的酸性環境に適応できる独立栄養性菌種の速やかな定着に続いて、通性独立栄養性菌種を経て従属栄養性細菌叢が形成され、その後は門レベルの多様化の段階から科・属レベルでの多様化の段階にシフトしていくことが推察された。


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