| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S04-7  (Presentation in Symposium)

三宅島から学ぶ噴火荒廃地の緑化技術
Revegetation technics on devastated site, lesson from Miyake-jima Island

*小川泰浩(森林総合研究所)
*Yasuhiro OGAWA(Forest Res. & Management Inst.)

三宅島雄山では,2000年7月の噴火から2ヶ月続いた降灰により植生が深刻な被害を受けた。噴火活動は翌年には沈静化したが,二酸化硫黄を中心とする酸性の高濃度火山ガス放出が10年以上継続した結果,降灰を生き延びた植物を枯死させた。二酸化硫黄の日放出量は,2000年に2万~8万トン,2007年に8百~5千8百トンと高レベルであったが,2009年に5百トンに減少し,2016年以降は数十トン以下の低レベルに変化した。高濃度火山ガスによって生活が困難となった島民は約4年半に及ぶ島外避難を強いられた。住民帰島後の治山計画の中で島の自生種を考慮した緑化ガイドラインが整備されたが,火山ガス噴出の収束が予測できない状況では,従来の緑化工がガイドラインに対応できなかった。そのため,自生種の使用と酸性環境に耐えられる緑化工法の開発が課題となった。最初に,噴火後の火山地域で見られた植生の自然回復を参考に植穴(バンカー)工法を考案した。この工法は深さ0.5 m,縦横3 m以上の矩形の穴を掘り,そこに草本や木本で緑化する工法である。バンカーは地表流の水や侵食土砂の受け皿の役割をもつ。バンカーにおける植生調査の結果,施肥などの管理を行わなくとも草本や木本の生育はガス噴出量の低減に応じて進むことを確認した。しかし,この工法を急傾斜地で行うと掘削土の処理が困難な欠点を持つ。次にこの欠点を解決するため,掘削せずに凹地を作り,これを植穴や侵食土砂の受け皿として活用する三日月形資材(特許第6037518号)を開発した。この資材(東京クレセントロールⓇ)と自生種を組み合わせた緑化試験をリルやガリに行った結果,資材やその周辺にハチジョウススキの自然侵入と定着を促進させる能力が確認された。本報告では,以上の自生種による緑化試験から得た知見に基づき噴火荒廃地の地形に応じた点群緑化という新たな植生回復手法を提案する。


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