| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S05-1 (Presentation in Symposium)
地球表層の水循環を表現する陸面過程モデルが最初に開発されてから半世紀が経過し、土壌・植生・河川における熱・水収支の過程の表現は高度に発達した。一方、世界の河川の8割は人工構造物(ダムなど)で分断されており、世界の年間河川流量の1割が取水・利用されているが、人間の水利用・水管理の表現はごく最近までほとんど進んでいなかった。
報告者は全球水資源モデルH08の開発に取り組んできた。このモデルは簡易な陸面過程・河川モデルをベースとし、取水・ダム操作・海水淡水化・運河導水などの主な人間の水利用・水管理を表現する。標準的な空間解像度は緯度経度0.5度(約50km)で、時間解像度は1日である。これにより、上流の水利用により下流の流量が減少する、ダム操作で河川流量の季節変化が変わるといった事象をシミュレーションで表現することができる。
本発表では、これまでのH08の開発と応用例をいくつか紹介したのち、現在取り組んでいる課題を紹介する。これには、全球や領域でのシミュレーションにおける空間解像度の飛躍的な向上、ダム・海水淡水化・運河といった水利施設の将来分布の推定が含まれる。こうした課題には生態学と多分の接点があり、それらについても論じたい。