| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S06-2  (Presentation in Symposium)

景観抵抗性を考慮した空間明示型標識回収法による個体密度と捕獲率の推定
Estimating population density and hunting mortality using spatially-explicit tag-recovery methods considering landscape resistance

*深澤圭太(国立環境研究所)
*Keita FUKASAWA(NIES)

農地や森林が混在する景観において、動物個体にとっての好適なハビタットや移動障壁(景観の抵抗性)、さらに人為的要因による死亡リスクは空間的に不均一に分布している。それらの空間分布の重なりは動物個体群の安定的な存続にとって重大な影響を与えるため、それら全体をメカニズムに基づいて統合した空間明示的な評価が必要となる。本講演では、そのための手法として標識再捕獲調査と人為的な死亡イベントに際する標識の回収を組み合わせた空間的な調査デザインを提案する。そして、得られたデータから空間的に不均一な個体密度・景観の抵抗性・人為死亡率を同時に推定するための統計モデルを構築した。モデル構造の概要は次のとおりである。1. 個体は潜在変数としてホームレンジの中心座標を有し、個体の存在確率分布は中心への引力に相当する移流項と地理的障壁に依存する拡散項からなる移流拡散方程式の平衡解として得られる。2. 中心座標の密度分布は環境要因に依存する不均一ポアソン過程によって決まる。3. 標識再捕獲調査における個体の検出率は調査を実施した地点における個体の存在確率と「個体が存在する条件の下での検出率」の積になる。 4. 個体が人為的要因で死亡する確率はホームレンジが存在する場所の環境要因に依存する。パラメータの推定は、ホームレンジ中心座標を周辺化した周辺尤度最大化法により行うことができる。講演においては、2019年に知床半島3町(斜里町、羅臼町、標津町)においてヒグマを対象に実施されたDNA標識再捕獲調査、およびそれと同時期に得られた捕殺個体の網羅的な遺伝情報に対してモデルを適用した結果について発表する。


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