| 要旨トップ | ESJ68 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S06 3月18日 14:00-17:00 Room B
知床世界自然遺産地域では、ヒグマ個体群を健全に維持するとともに人間との軋轢を軽減すること、エゾシカの高密度化により劣化した自然植生など生態系の回復をはかることが、保全管理上求められている。そこで我々は、最新の科学的知見に基づく保全管理手法の提案を目的として、①ヒグマ個体群の新規個体数推定法の開発、②海域と陸域の物質循環に寄与するヒグマの大量出没の要因解明、③エゾシカ個体群の高密度維持機構の解明、に関する研究を2019年度から開始した。①では大量のDNA試料から個体識別を行い、空間明示型標識再捕獲法とタグ・リカバリー法による個体数推定手法を開発した。②では、体毛の同位体比分析と糞分析による食性の解明に加えて食物資源の利用可能量に関する調査を行った。③では、標識個体の追跡調査等からエゾシカの個体群特性(生存率や加入率)の解明を行った。今後、得られた研究成果を活用し、環境省・林野庁や知床世界自然遺産地域科学委員会等と連携し、管理手法及び管理計画の改善をはかる。本研究は、全国の国立公園の「生態系維持回復事業」によるニホンジカの個体数調整と自然植生の回復、クマ類の保全と管理、さらには、世界自然遺産地域の生物多様性の保全に寄与すると考えている。
本シンポジウムでは、これまでの研究成果を報告するとともに、今後の保全管理手法の改善に向けた議論を行う。クマ類やニホンジカなど野生動物管理に関わっている研究者ばかりではなく、広く世界自然遺産や国立公園の保全管理に関心のある方の参集に期待する。
[S06-1]
DNA解析に基づくヒグマの個体群特性の解明
Population characteristics estimated based on DNA analysis in brown bears
[S06-2]
景観抵抗性を考慮した空間明示型標識回収法による個体密度と捕獲率の推定
Estimating population density and hunting mortality using spatially-explicit tag-recovery methods considering landscape resistance
[S06-3]
ヒグマの食性の地域差と年次変動~大量出没の要因となる鍵食物の解明
Regional difference and annual variation of brown bear diet: as a possible factor driving human-bear conflict
[S06-4]
ヒグマの大量出没に影響すると考えられる食物資源量の年次変動
Annual difference in food availability of brown bear that affects mass intrusions into residential areas
[S06-5]
エゾシカの個体群特性~個体数調整実施地域と非実施地域間の比較
Comparisons of population parameters for sika deer between the control-killed and the protected area