| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S07-3 (Presentation in Symposium)
オトシブミ科はゾウムシ上科に属するグループで、世界に2500種、日本に90種ほど存在する。このグループのメス成虫は産卵の際に葉や実、新梢などの植物体を切ったり巻いたりする植物加工を行う。こうした加工はこのグループが生きた植物体を利用することを容易にするとともに、幼虫に寄生する昆虫からの回避にも役立つと考えられている。
オトシブミ科は分類にもよるがチョッキリ亜科とオトシブミ亜科に大別される。なかでもオトシブミ亜科に属する種は産卵の際に葉の一部もしくは大部分を用いて「揺籃」と呼ばれる俵型の葉巻を作る。揺籃内でふ化した幼虫は内部の葉のみを摂食し、成虫となって揺籃から脱出してくる。メス成虫は口器から糸を分泌して葉をとめることはなく、折り紙のように葉を織り込んでいくことによって隙間のない堅牢な揺籃を巻き上げる。その加工方法は細部まで明らかにされており、踏査→裁断→折りたたみ→巻き上げといった複数の加工段階を経て、一つの揺籃が作成される。
これまでの研究から、メス成虫による産卵葉の選択や加工には葉の大きさや硬さ、新鮮さ、損傷など複数の要素が影響すると考えられている。主脈を軸に葉を折りたたみ、先端から立体的に葉を織り込んで巻きあげていくオトシブミ亜科の加工方法を考えると、葉の形状もこれらの葉形質と並んで加工に影響を与える可能性がある。
本発表ではまずオトシブミ科について短く紹介したのち、オトシブミ亜科の揺籃作成行動について詳しく紹介する。その後、オトシブミ亜科昆虫2種(ムツモンオトシブミ・ヒメコブオトシブミ)について、両種の加工行動にどのように葉の形状が影響しているのか、これまでに得られた知見をご紹介したい。