| 要旨トップ | ESJ68 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S07 3月18日 14:00-17:00 Room C
植食性昆虫は、白亜紀に起きた被子植物の爆発的な繁栄と共に多様化し、陸上生態系での多様性の中心を担うまでに多様化したグループである。その多様化過程の解明は進化生態学の分野でも主要なテーマの一つであり、実に多くの研究が行われてきた。植食性昆虫における多様化研究のこれまでの主流は、寄主植物との「食うー食われる」関係の中で、“逃げる植物”の被食防衛物質とそれを“追う昆虫”の解毒システムといったケミカルな進化に注目したものであり、詳細なメカニズムも含めかなり解明が進んでいる。一方で、植食性昆虫の適応進化はそのような寄主植物とのケミカルな進化だけでは語れない。主に「行動」をベースにし、植物の構造的な改変を伴う、“切る”“巻く”“潜る”“コブを作る”などの「植物加工」もその一つであり、植食性昆虫の様々な分類群で報告されている。しかし、植食性昆虫の「植物加工」行動は、その実態すらあまり知られていないものも多く、さらに適応進化の観点からもこれまであまり注目されてこなかった。本シンポジウムでは、主に鱗翅目・甲虫目や虫こぶ形成昆虫での植物加工行動に注目し、まずはその実態を広く紹介するとともに、適応進化という観点からも議論を試みる。本シンポジウムにより、「植物加工」が新たな切り口となって、植食性昆虫の多様化研究がさらに発展するようなきっかけを提供することを期待している。
コメンテーター:加藤真(京都大)
[S07-1]
植物乳液vs.葉脈切断・溝切:植物被食防衛機構と植食性昆虫の植物加工による打破
Behavioral adaptations of herbivorous insects against plant defenses: topics about vein-cutting and trenching as adaptations to plant latex, etc.
[S07-2]
鱗翅目幼虫による植物組織の加工とその意義
Processing of plant tissues by lepidopteran caterpillars and its significance
[S07-3]
オトシブミの植物加工行動:加工材料である葉の形態との関係
Plant processing behaviours in leaf-rolling weevils: relationships with leaf morphology as construction materials
[S07-4]
寄生蜂と植物被食防衛を克服せよ!:オトシブミとハムシの“巻く”“切る”行動の進化
Evolution of “plant-cutting" and “leaf-rolling" behavior in weevils and leaf beetles
[S07-5]
虫こぶ形成者による植物の多様な加工:虫こぶ形成のメカニズムおよび適応的意義
Host plant manipulation by gall-inducing insects: diversity of galls, adaptive significance for inducers, and mechanism of gall inductio
[S07-6]
葉の中をリノベする:ホソガ科リーフマイナーによる植物操作の生態的意義と進化的起源
Renovation inside leaves: ecological significance and evolutionary origin of plant manipulation by gracillariid leaf miner