| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S12-4  (Presentation in Symposium)

実務者の立場から生態学分野の施策・事業を考える
Ecological policy and business from the standpoint of Practitioner

*小笠原奨悟(パシフィックコンサル)
*shogo OGASAWARA(Pacific Consultants Co., Ltd.)

「環境コンサルタント」は、主に建設コンサルタント会社やシンクタンク等の環境部門に所属し、環境調査や環境アセスメント等の事業から、行政計画の策定、政策立案の支援まで、環境に関わる幅広い実務に従事している。生物多様性や動植物に関する知識を扱うことも多く、生態学分野の知見や政策提言を、現場の施策・事業に実装している立場だといえる。従来の建設コンサルタント会社に所属する環境コンサルタントの役割は、開発事業における環境アセスメントを担うことが多かった。一方で、2010年のCOP10などを契機に、生物多様性地域戦略の策定支援や生物多様性に関する政策提言など、環境コンサルタントが携わる業務は広がりつつある。
近年、注目が集まっている「グリーンインフラ」や第五次環境基本計画に位置付けられた「地域循環共生圏」は、自然環境や地域資源を積極的に活用しようとする概念である。その背景として、気候変動適応、自然災害の激甚化、地域経済の停滞、人口減少・一極集中など、社会・経済的課題に対する関心の高まりが挙げられる。そのため、これらの政策の社会実装に向けては、従来の生物多様性の保全に関する知見だけではなく、防災・まちづくり・経済など、多様な分野を横断的につなぐことが不可欠である。また、自然環境が社会にもたらす恵みを改めて認識し、持続可能に利用することが求められる。
2010年からの10年間を振り返るだけでも、自然環境分野の政策は大きく変化した。それに伴い、環境コンサルタントに求められる役割も変化している。本発表では、主に生態学に関連する施策・事業の変遷を振り返りつつ、環境コンサルタントが具体的にどのような関わりを持っているのか、どのような役割を求められているのか、発表者の事例を通じて考えてみたい。また、これからの10年間を見据え、今後のさらなる連携の推進、生物多様性の主流化に向けた提案を行いたい。


日本生態学会