| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S14-2  (Presentation in Symposium)

無脊椎動物が持つ難分解性有機物分解能からみた湿地帯の浄化機能
Wetland purification capabilities: from the perspective of aquatic invertebrates' enzymes decomposing hard-degradable polysaccharides

*劉文(京都大学)
*WEN LIU(Kyoto University)

沿岸湿地帯は全生物群集(biome)の面積の2.3%程度しか占めていないが、そこには全生物群集を構成する炭素の9.6%(240ギガトン)が蓄積され、その他の生態系に比べて炭素含有量が顕著に多いことが知られている。陸上植物が光合成で固定した有機炭素が湿地帯に流入し、堆積している。これまではこれらの有機炭素の大半は生物分解を受けにくいセルロースのような高分子有機物であると考えられてきた。また、湿地帯は以前から「天然の浄化槽」として、陸上で生産された栄養塩を水圏生物に提供してことは知られてきたが、いかなる生物がいかなるメカニズムでそこの浄化に寄与しているかについて不明な点が多い。ヤマトシジミの内源性セルラーゼが発見されて以来、多くの水圏無脊椎動物においても内源性の糖質加水分解酵素の存在が確認されており,湿地帯に生息する無脊椎動物が陸上植物由来の難分解性有機物を低分子化することに強く関与している可能性が示唆された。本講演では湿地帯に生息する無脊椎動物に焦点を当て,1)いかなる生物が、2)いかなる分解メカニズムで、3)どれほど陸上植物由来の難分解性有機物を利用しているか、の視点から湿地帯がもつ浄化機能の本質を紹介する。


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