| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S15-6 (Presentation in Symposium)
世界的に都市化や集約化に伴う農地の土地利用の変化は、在来動植物の多様性減少、それによる種間相互作用のネットワーク構造の改変を通じて、生態系サービスの劣化を引き起こしうることが懸念されている。伝統的に管理されてきた農地周辺の半自然草地における送粉ネットワークは多様な在来植物・送粉者種から成りたっていることが知られてる。一般的に構成種の多様性が高いネットワークではスペシャリスト化した種間相互作用がみられる。一方で、土地利用変化により構成種が減少した場合、ネットワーク内で送粉者種間の競争が緩和され、残存送粉者のニッチ拡大、それに伴うネットワーク全体のジェネラリスト化が起こると予測されている。また、ジェネラリスト化した送粉ネットワークでは、送粉者による異種植物間飛行が増加することで送粉サービスが減少することも予測される。これらの土地利用変化に伴って縮小した送粉ネットワークにおけるジェネラリスト化や送粉サービスの劣化に関する予測は、十分に検証されてない。
この発表では、上記の予測検証のために調査地周囲や調査地自体の土地利用が異なる阪神地区の水田において畦畔上の半自然草地を対象に、開花虫媒植物−送粉者のネットワーク構造を解析し、一部の調査地においては植物の送粉成功の調査も行った。解析では特に、周囲人工地増加の影響に注目し、圃場整備や耕作放棄の影響についても検証を行う。20を超える植物−送粉者ネットワークのデータを用いて、主要なネットワーク指標を算出し、土地利用変化と植物・送粉者の種多様性減少およびネットワークのジェネラリスト化に有意な関係がみられるのか解析した。また、植物群集内の在来・外来植物種を対象にその送粉成功が、土地利用や送粉者の多様性減少やネットワークのジェネラリスト化によって影響を受けているのか解析し、在来植物群集への送粉サービスが受ける影響について議論し、栽培植物に対するサービスへの影響についても考察する。