| 要旨トップ | ESJ68 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
シンポジウム S15 3月21日 9:00-12:00 Room B
送粉生態学は植物の花粉の授受をあつかう分野であるが、ダーウィンによるランの研究以来、送粉をおこなう動物と植物との相互作用系として、生態学の大きな一分野を成す。古くから多くの生態学者によって花と動物の共進化、植物の繁殖戦略、送粉者の採餌戦略等の基礎研究が進展してきた。送粉は私たち人類の知的好奇心を刺激する重要な生態系機能であり、植物、送粉者双方の多様性の維持にも重要な役割を果たすだけでなく、作物生産にも貢献するため、近年では応用的意図をもった研究が急激に増加している。農作物の生産や受粉に対する送粉者の行動や種間相互作用の効果、あるいは気候変動、周辺環境や時空間の変動による送粉者群集の変化とその影響は、ホットトピックといってもよいだろう。これら社会的ニーズにこたえることは、生態学者の一つの使命であり、やりがいでもある。一方、これから研究を始める若者には、研究の純粋な面白さに心躍らせ、柔軟な発想によって送粉という学問の世界をさらに広げてもらいたい。このような意図で、企画者らは基礎から応用に至る多方面にわたる「送粉」に関わる話題を鳩首凝議できる場として、本シンポジウムを企画した。そのため、生態系機能の基盤としての役割に加え、私たちの暮らしや精神への文化的貢献の意味を併せ持つ広義概念としての「送粉サービス」をキーワードとし、重鎮から中堅、若手まで幅広い研究者を参集した。世代や所属、分野を越えて研究成果のシナジーを目指すと共に、互いに妄想しあい、送粉に関わる学問を生態学的に強化する面白さを語り合う研究者たちの愉快な集会である。送粉に関するふとしたつながりやアイデアによって、送粉生態学の研究が今後も発展することを期待したい。
[S15-1]
夜行性動物による送粉サービス
Pollination services provided by nocturnal animals
[S15-2]
草原の送粉者はどこから来るのか?周辺土地被覆の違いに基づく発生環境と活動圏の推定
Where did the grassland pollinator come from? The estimation of pollinators' mobilities and habitats based on the surrounding landcover difference
[S15-3]
花の微生物と送粉共生:農地での応用の可能性
Floral microbes and plant-pollinator mutualism: potential agricultural applications
[S15-4]
送粉サービスにおける生態学的集約化:農地景観のもつ潜在的な生息地機能を引き出す
Ecological intensification on pollination services: exploiting potential functions as habitat for pollinators in agricultural landscapes
[S15-5]
日本各地の果樹の訪花昆虫群集を比較する
A comparative study on communities of insect visitors in the orchards around Japan
[S15-6]
水田生態系における土地利用変化による送粉ネットワーク・送粉サービスへの影響
Effects of land-use changes on pollination networks and services in paddy ecosystems
[S15-7]
訪花者にみられる多次元の応答多様性:送粉サービスのレジリエンスへの含意
Multi-dimensional response diversity in pollinators: implications to the resilience of pollination services