| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W05-2  (Workshop)

エコツアーガイドとの協働による生物多様性調査の成果
Outcome from collaborative research with ecotour guide.

*赤石大輔(京都大学), 井上悟(京都大学), 法理樹里(琵環研セ)
*Daisuke AKAISHI(Kyoto Univ.), Satoru INOUE(Kyoto Univ.), Juri HORI(Shiga Pref.)

市民科学においては、研究者と市民の間の公平性と、双方にメリットを感じられることが重要である。発表者らは、研究者と地域の協働研究として、京都大学芦生研究林にてエコツアーガイドときのこ調査を実施している。研究林は大学の施設ながら90年代以降ガイドによる有料エコツアーが年間3000人程に提供されている。また、地域の子どもたちへの環境教育の場としても活用されており、毎年地域の小中学校の生徒が遠足に訪れる。研究者にとっては、頻繁に研究林に入るガイドにより研究林内の希少種等の発見可能性を高めることができ、ガイドにとっては生物の生態や分類等の知識を得ることでガイドの質を高めることが期待される。本発表では調査結果と合わせてガイドへのヒアリング、地域および全国アンケート等から、今後の市民科学の実施に向けて配慮すべき点を紹介する。
【成果と課題】 ガイドとの連携により得られた大きな成果の一つとして、京都府内では絶滅種とされていたきのこを2020年に筆者が芦生のエコツアーガイド2名とともに48年ぶり発見した。ガイドへのアンケートの結果、ガイドの質向上に向けて、研究者からの情報提供を求めていることが把握できた。一方、頻繁に研究林を訪れるガイドが研究林内の生物情報を詳細に得ていることが示唆された。
 2018年と19年に参加した中学生へのアンケートでは、訪問後の感想として「森に感動した」・「川に感動した」と併せて「芦生の森は、美山の自慢できるもののひとつだ」の回答への評価値が高かった。小中学生への案内もガイドが行なっており、ガイドは地域の魅力を将来世代へつなぐインタープリターの役割も担っている。そのため、研究者とガイドとの研究成果や保全活動の情報共有が環境教育の質向上にも重要であると考えられた。
 課題としては研究者からの情報提供の機会不足、ガイドの高齢化、芦生研究林の知名度低下など、持続可能な取組への障壁が確認された。


日本生態学会