| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W06-3  (Workshop)

ニッチが異なるヒルギ科二種の菌根共生と細根形態様式
Patterns of mycorrhizal symbiosis and fine root morphology in two Rhizophoraceae mangroves with different niches

*赤路康朗(国環研), 井上智美(国環研), 谷口武士(鳥取大学), 馬場繁幸(ISME)
*Yasuaki AKAJI(NIES), Tomomi INOUE(NIES), Takeshi TANIGUCHI(Tottori University), Shigeyuki BABA(ISME)

マングローブ植物の根には土壌養水分吸収を促進するアーバスキュラー菌根菌(以下,AMF)と共生する場合があることが知られている.しかし,マングローブ植物に共生するAMFの組成やAMF共生の環境応答に関する知見は限られており,汽水域という特殊な環境でAMFとどのように相互作用しているのかについて不明な点が多い.また,マングローブ植物においては,養水分吸収に重要な細根形態に関する報告も少ない.そこで本研究では,河口域に優占するヤエヤマヒルギと河川中流域に優占するオヒルギの2種を対象とし,AMF共生様式および細根形態様式を明らかにすることを目的とした.西表島後良川において上記2種の根と根近傍土壌を採取し,AMFを対象とした顕微鏡観察とメタゲノム解析,および細根形態計測を実施した.細根形態計測の結果,ヤエヤマヒルギは直径0.1mm以下の細根をオヒルギよりも高い割合で生産していた.顕微鏡観察の結果,ヤエヤマヒルギ21個体の細根内からはAMFが観察されなかったのに対し,オヒルギでは66個体中10個体でAMFの菌糸や樹枝状体が観察された.メタゲノム解析の結果,AMFの菌糸や樹枝状体が観察されたオヒルギにはAcaulospora属のAMFが優占していること,また,土壌中のAcaulospora属の出現頻度は土壌間隙水の電気伝導度と負の相関関係があることが示された.加えて,オヒルギが優占していた場所の土壌を用いて上記2種を温室栽培し,顕微鏡観察を行った結果,塩ストレスの有無に関わらずヤエヤマヒルギからはAMFが観察されなかったのに対し,オヒルギは塩ストレスが無い環境下で全ての個体からAMFが観察された.以上の結果から,ヤエヤマヒルギは土壌養水分獲得をAMFに依存せず,細根を発達させているのに対し,オヒルギは塩ストレスの低い環境下でAcaulospora属と共生することが示唆された.


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