| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W13-2 (Workshop)
植物の成長にとって過酷な環境と言える鉱山跡地や鉱脈沿いにおいては、特殊な生態系が成立していることが多くの研究者により指摘されてきた。重金属環境に生理的にも生態的にも適応し、高濃度の元素に対して耐えることができる能力を獲得した自生植物が多数存在することが知られている。重金属を過剰吸収しても体内での毒性を軽減させる何らかの機能(重金属耐性)を獲得した植物種が生き残ることが可能と考えられるが、自生植物の重金属耐性機構については未解明な点が多かった。これまで発表者らは、生態化学的手法による解析を通じて、鉱山跡地での自生植物における重金属耐性機構の解明を試みてきた。その結果、野外環境で生育する自生植物の耐性機構には、植物自身の機能に加えて、機能性微生物(根に内生する微生物)との相互作用が顕著に影響するという可能性について明らかにしてきた。そこで本発表では、2つの研究事例を紹介する。まず、鉱山跡地に自生するリョウブ(Clethra barbinervis)の重金属耐性機構について、機能性微生物との相互作用を考慮し解析した事例を説明する。さらに、放射性セシウムがリョウブの内生菌の種類や機能に与える影響を考慮し、放射性セシウムによる内生菌種の変動がリョウブの重金属耐性に与える影響を評価した研究事例についても述べる。紹介する2 つの研究事例においては、解析手法が大きく異なっている。前者の研究が野外サンプルの分析や接種実験など化学的手法を中心に実施した一方で、後者の研究は野外で採取した植物個体数、分離菌株数、分析数を増加させ、統計解析により解析を試みた。両研究が継続的に実施された結果、研究方法の異なる各研究の利点・不利点を理解することができたため、その点についても言及したいと考える。