| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W13-4 (Workshop)
訪花昆虫は花粉や花蜜を餌として捕集し、自身の生存や繁殖の栄養源や、仔の餌源として利用します。花粉は主に外側の花粉壁部分と内部の細胞部分(雄原細胞や精細胞を含む植物細胞)に大別することができ、花粉壁はスポロポレニンが主成分で化学的・物理的に安定しているため、花粉壁を栄養源として消化・吸収することはできません。地中の花粉化石が残存しやすいのはこのためです。そのため、訪花昆虫が栄養源として利用しているのは花粉内部の細胞になります。花粉に含有する栄養量は非常に重要で、栄養が少ない場合、昆虫の産卵数を減少させる可能性もあります。どの植物種の花粉が「昆虫にとって良い花粉か」を解明するためには、飼育実験や花粉に含まれる栄養分析が必須になります。花粉に含まれる栄養分析はアミノ酸・タンパク質・脂質・無機成分などを中心に1960年代から行われています。これまで多く行なわれてきた栄養分析は、タンパク質量はケルダール法、アミノ酸はHPLCを用いた分析法です。そして、これまでの多くの研究は一度に大量の花粉が得られるミツバチやマルハナバチの花粉団子が用いられてきました。しかしながら、花粉団子に含まれる花粉は単一とは限らないため、正確に評価するためには葯から直接花粉を採取する必要があります。これまでの両分析手法ともに1回の分析で必要な花粉量は数十㎎で、野外からこの量の花粉を採取することは困難です。そのため、できるだけ少量でかつ、簡便な手法が必要になります。そこで、今回は少量の花粉(約1㎎)でタンパク質を分析する方法、またアミノ酸分析では、どれくらい少量の花粉で分析可能かについて検証した結果を紹介します。これらの分析手法を用いて、野生植物で行った結果を交えて今後どのような研究に発展できるかについても検討していきたいと考えています。