| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W17-4 (Workshop)
縞枯れ林は、風による林冠木の枯死と枯死木帯における稚樹の成長が継続的に起こることで形成されると考えられる。縞枯れ林における卓越風向は冬季の霧氷の付着方向などにより推定されているが、実測された例は少ない。また、縞枯れ林の広域的、長期的な更新過程については観測例が少ない。そこで、北八ヶ岳縞枯山の縞枯れ林に高さ3mの風向風速計を設置し、平均風速・風向の観測を行った。また、地形による風への影響を明らかにするため、RIAM-COMPACT(R)を用いた風況シミュレーションを行った。さらに、縞枯山上空で1947年から2005年に、主に林野庁により撮影された空中写真の判読による縞枯れ林の枯死木帯の位置と面積の推定および写真測量による数値表層モデル(DSM)の推定を行った。推定されたDSMと国土地理院による数値標高モデル(DEM)との差分から林冠高を推定し、その変化について検討した。
風向の頻度分布をみると、南西~西の風が全体の約80%を占めていた。平均風速は夏季よりも冬季で平均風速が高い傾向があり、冬季の風のストレスは高いものと推察された。一方、シミュレーション結果から、風は上空から地表に近づくにつれて減衰するが、東~南東、および南南西~西の二方向で地表付近における風の減衰が他方向と比べて小さい傾向が認められた。以上より卓越風の生成には地形が関与すると考えられた。
空中写真の判読から、縞枯れ林における枯死木帯の面積は伊勢湾台風後の1962年撮影時に最大となりその後減少した。大規模かく乱がなかったと考えられる1962年以降も樹木の枯死は継続して起こっていた。卓越風向と枯死木帯の移動方向との関係は明らかではなかった。各撮影年において、枯死木帯に隣接する主に林冠高5m以上の林分で枯死が起こっており、林縁部の樹高の高い樹木が風衝により枯死していると推察された。