| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W19-2 (Workshop)
スクミリンゴガイは輸入、養殖後に我が国の食料システムからlost snailとなった養殖残存がまず第1派である。80年代後半、前原市等では水稲害虫化し、特に省力的直播稲作での被害が深刻化した。1993年当時、松山の石手川で発見できたが希少種で四国では1990年代後半以降に害虫化した(日鷹ら 2007)。農水省の発生面積統計では、90年代後半から九州各県の発生面積は急激に増大、続いて四国、中国、近畿、中部の水田地帯で飛び火様に発生被害拡大、現在東進は止まらない。本種には、「稲守貝」「神の貝」等の呼称もあり、本外来種が蔓延した地域で水稲を食さぬよう浅水管理して除草に逆利用し、合鴨のライバルとして有機・減農薬技術イノベーションとして一世を風靡している。本種を水田除草目的で未発生地域の水田放流した事例は、愛媛や広島において報告され(日鷹ら 2007;日鷹 2020)、一部社会問題化している。本種は随伴行為で分布拡大が助長され、合鴨のように水田内放牧的管理できず、新規放流数年後に地域で農業被害をもたらす。本種にはメタアルデヒド等の駆除薬剤があるが、地域根絶させる効果はない。生産者は初期防除に新たなコスト投入を強いられ、本種の除草効果は柔らかい広葉雑草に限定され、ノビエ類等の強害草やアゼガヤ等の外来雑草に有効ではない。一方、合鴨農法は、そもそもが訓化された家禽利用であり野生種利用ではなく、水田内での一時的肥育放牧である。それに比べ、本外来種はタニシ科とは生物学的に異なる植食性野生貝類であり、訓化過程やその試みさえ皆無で、在来タニシ科で粗放的な水田養殖生物文化史と混同視すべきではない。 本外来種利用の技術革新は、本種をあまりに甘く見て利用しようとした事につきないのではないか? 農業は永年の在所のルールに従って、伝統的に、かつ自然と調和したTEK(Traditional Ecological Knowledge)の理念に沿った延長線上で発展させるべき教訓について学ぶべきである。