| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D05-01  (Oral presentation)

混殖種ツユクサの先行自家受粉は他殖の機会を減少させうるか?
Does prior selfing diminish the opportunity of outcrossing in a mixed mating species Commelina communis?

*増田佳奈(神戸大学), 勝原光希(岡山大学), 宮崎祐子(岡山大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Kana MASUDA(Kobe Univ.), Koki KATSUHARA(Okayama Univ.), Yuko MIYAZAKI(Okayama Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

先行自家受粉は送粉に先立つ自殖により胚珠減価を引き起こし、他殖機会減少のコストをもたらすため、遅延自家受粉を行う混殖種では先行自家受粉は起こらないとされている。しかし、混殖種であるツユクサは遅延自家受粉の機能を持ちながら先行自家受粉を行うことが報告されている。先行研究において先行自家受粉は、非常に強い送粉者制限がみられるとき、他家花粉の非常に強い遺伝的優位性がみられるとき、もしくは自殖が他殖より適応的であるときの非常に限られた条件下でしか進化しないと考えられてきた(Lloyd, 1992)。
本研究では、ツユクサの先行自家受粉の進化要因を調べるため、2つの検証を行った。まず、先行自家受粉が送粉者制限下で進化するのか検証するため、訪花頻度、花形質と先行自家受粉率の関係について調べた。ここでは、訪花頻度の低い、もしくは送粉者誘引力の低い小さな花で先行自家受粉率が高くなることが予測される。加えて、他家花粉の強い遺伝的優位性があり、先行自家受粉後でも他殖できるのか検証するため、自家花粉と他家花粉の花粉管伸長速度の比較と、先行自家受粉後の花に異なるタイミングで人工的に他家受粉させた種子の他殖率の推定を行った。このとき、自家花粉より他家花粉の方が花粉管伸長速度が速いこと、花柱が長いときや他家受粉のタイミングが早いとき他殖率が増加することが予測される。
調査の結果、予測に反して集団の訪花頻度と先行自家受粉率に相関はみられず、送粉者を多く誘引しうる大きな花で先行自家受粉率が高いことが明らかになった。また、自家花粉と他家花粉の花粉管伸長速度に違いはなかったが、先行自家受粉していても花柱が長く、他家受粉が開花直後に起きる場合、高い他殖率がみられることが分かった。以上ツユクサでは、条件付きではあるが、他家花粉の遺伝的優位性があることが示唆され、先行自家受粉していても他殖機会が確保されうることが示された。


日本生態学会