| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D05-04  (Oral presentation)

コンロンソウ地下茎の挙動と土壌環境の関係解析
Analysis of the relationship between the behavior of rhizomes of Cardamine leucantha and the soil environment

*荒木希和子, 大西智也, 安藤葉生, 久保幹(立命館大学)
*Kiwako S. ARAKI, Tomoya ONISHI, Hagumu ANDO, Motoki KUBO(Ritsumeikan Univ.)

植物の器官は地上部と地下部に大別され、それらが伸長する地上と地下は大きく異なる環境である。地下茎は茎頂に由来するが、土壌中に存在する地下部の器官である。アブラナ科のコンロンソウ (Cardamine leucantha) も地下茎を伸長させ、その先端に娘ラメットを形成してクローン成長を行う。ER (Endoplasmic reticulum) body は、アブラナ科植物に特異的な防御応答に関わる細胞小器官であり、根や胚軸などで恒常的に見られることが知られている。そして、コンロンソウ地下茎にも形成されることから、特に地下部の防御応答に機能すると考えられている。本研究では、地下茎の発達ならびに地下部のER bodyの応答変化を解析し、植物地下部と土壌環境との関係を明らかにすることを目的とした。
コンロンソウの地下茎と根をサンプリングし、トランスクリプトーム解析およびリアルタイム定量PCRにより遺伝子発現量を調べた。はじめに、野外環境下における変化を調べたところ、地下茎先端より地上部が分化する7-11 月には地下茎においてER body 関連遺伝子の発現は維持されていた。また枯死した地下茎が多い株ほどその発現量が高く、根出葉を持たない株ほど発現量が低いことから、地下茎におけるER bodyは季節変化と成長に影響を受けることが示唆された。微生物量と粒度組成の異なる土壌を用いた栽培実験では、微生物が多い土壌で地下茎のPYK10(ER bodyに含まれるβ-グルコシダーゼ)の発現量が高く、粒度の小さい土壌では地下茎の枯死率も発現量も低かった。また地下茎では、土壌環境にともなう変化が根に比べて小さかった。さらに地下茎では根・土壌と異なる微生物叢を形成していることがわかった。ゆえに地下茎の土壌環境に対する応答性は器官の生育や損傷によって変化し、微環境には安定的であることが示唆される。


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