| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D05-05  (Oral presentation)

オニタビラコ2亜種における都市・里山間の分布パタンと表現型形質の差異
The differences in phenotypic traits and distribution patterns between two sub-species of Youngia japonica within an Urban-Rural gradient

*中野崇平, 畑中謙佑, 中田泰地, 矢井田友暉, 丑丸敦史(神戸大学)
*Shuhei NAKANO, Kensuke HATANAKA, Taichi NAKATA, Yuki YAIDA, Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

都市部における人工地面積の増加は、植物の生育地の改変・分断化を引き起こすが、これらに対する植物の適応進化がみられることを示唆する研究が近年増加している。また都市における生育地の富栄養化などに対しては共通した都市特有の表現型形質変異がみられる。一方で、都市で生育地の分断化の影響を受ける種と受けない種では異なる応答を示す可能性が考えられる。
一般に、人工地による分断化の影響を受け、限られた範囲の生育地に分布する植物においては、散布能力の低い種子が適応的とされる一方で、人工地環境下においても分布を拡大している種が存在する場合、これらの種では都市域で散布能力を向上させることが予測される。
本研究では、以上の予測を阪神都市圏の水田と都市緑地の計10地点において、都市-里山間で同所的に共存するオニタビラコ2亜種(都市域で優占度の低いアカオニタビラコと優占度の高いアオオニタビラコ)を対象に、各亜種の都市-里山間の表現系形質変異およびその亜種間差について調査した。各調査地点の中心から半径1km圏内の人工地面積の割合を算出して各地点の都市化度とした。また、各地点の土壌pHと土壌含水率を測定した。都市化が二亜種の形質に及ぼす影響を明らかにするため、葉形質としてSLA、繁殖形質として頭花サイズ、種子形質として冠毛長・痩果長の測定を行い、それぞれの都市化度との関係を解析した。
解析結果から、都市化度の高い調査地で、両亜種ともSLAは高くなるという共通した形質変異がみられた。一方、頭花サイズはアカオニタビラコのみ都市化度に対して有意に増加した。都市部で優占度を減少させるアカオニタビラコにおいて冠毛長が都市化度の増加に伴い低下したが、アオオニタビラコは都市-里山間での形質差はみられなかった。本発表ではこれらの結果を踏まえて、都市化に伴う生育地の環境変化や分断化が対象二亜種の分布および形質変異に及ぼす影響について議論する。


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