| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D05-07  (Oral presentation)

オオバコ種子の靴への付着散布
Seed dispersal of Plantago asiatica by sticking to the shoes

*阿部菜々子, 小山耕平, 岡本あずみ, 大越証路, 片山公我, 加藤結良, 田中侑季, 三村菜月(帯広畜産大学)
*Nanako ABE, Kohei KOYAMA, Azumi OKAMOTO, Shoji OKOSHI, Kowa KATAYAMA, Yura KATO, Yuki TANAKA, Natsuki MIMURA(Obihiro Univ. Agr. Vet. Med.)

散布は植物の世代をつなぐものであり、生物が自分の子を作り育てる行為である繁殖において不可欠であると考えられる。動物のように自由に動き回ることができない植物にとって種子散布は種の繁栄のために重要な役割を果たしている。種子散布について解明することで、植物の繁殖や侵入過程などの分野の更なる発展が期待される。オオバコ(Plantago asiatica)は、人間や車などによる踏みつけに耐性があり、踏みつけによって靴やタイヤに種子が付着し、散布されると考えられている。しかし、オオバコの種子が靴に付着して散布されることを科学的に証明した研究はない。また、種子は濡れると粘着力を持つが、この粘液の散布に果たす役割についても未解明である。よって本研究では、オオバコの種子の粘液がどれほど散布に影響を及ぼすかを明らかにする。実験は北海道帯広市にある緑ヶ丘公園で実施した。オオバコを踏み、種子が付着した靴で各地点まで歩き、その都度付着している種子数をカウントし、種子の到達距離を測定した。これを種子が粘液に包まれない乾燥下と包まれる降雨後で測定し、粘液がどれだけ散布距離に影響を与えているか比較した。実験の結果、降雨後の種子の保持率は乾燥下と比べて高く、乾燥下では短距離散布、降雨後は長距離散布に長けていた。これらの結果は、粘液を持つ種子散布の傾向であることが示唆された。また、公園内外で多数のオオバコが見られたことから、オオバコは粘液を駆使し、様々な交通手段を用いる公園利用者に依存しながら、公園内外で盛んに種子散布を行っていると考えられる。また、今回の研究では、先行研究で示されていた、オオバコは人に依存した植物であること、歩行者は種子散布者として機能することを再確認できたと言える。


日本生態学会