| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-02  (Oral presentation)

奈良公園におけるイラクサの刺毛形質の季節変化 【B】
Seasonal changes of stinging hair traits of the Japanese nettle in Nara Park 【B】

*加藤禎孝(奈良教育大学), 石田清(弘前大学)
*Teiko KATO(Nara University of Education), kiyoshi ISHIDA(Hirosaki University)

奈良公園においてニホンジカの採食圧の異なる場所に生育するイラクサ2集団について刺毛形質の季節変化を明らかにし、その生態的意義を考察するため、採食圧の高い場所と低い場所に調査区を設定し、4月から9月まで月1回の頻度で各調査区内のイラクサ当年生実生から葉を1枚採取し、葉面積及び葉の表・裏面の刺毛数、刺毛密度及び刺毛長を測定した。そして各形質の(1)季節変化、(2)場所間差、(3)季節変化のパターンの場所間差を分析した。その結果、両面の刺毛数と刺毛長及び裏面の刺毛密度に季節変化が見られ、刺毛数と表面の刺毛密度については季節変化のパターンに場所間差が認められた。刺毛密度のピークは夏以降に見られ、採食圧の高い場所の個体の方がより遅い時期にピークを示す傾向が認められた。刺毛長は2集団ともに春の値が最も長く、夏・秋は短かった。また採食圧の高い場所の個体は1年を通じて低い場所よりも葉面積が小さく、刺毛長は長かった。
これらの結果から、イラクサ実生の刺毛形質の季節変化は、春の若いシュートや秋に結実する果実の防御を効率よく行うことに貢献していると考えられる。


日本生態学会