| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-13 (Oral presentation)
食植性昆虫の食草選択の進化については、Ehrlich and Raven (1964)やFutuyma (1976)、Becerra (2006) は食草の毒物質と昆虫の解毒機構の軍拡競争で昆虫の食性はスペシャリスト化すると予測した。しかし最近になって、Endara et al. (2017) は前適応によるhost defense chase説を新しく提唱し、昆虫が前適応により寄主植物の毒の進化の先を行く広食性進化を発表した。我々も同様に、中国産アズキゾウムシ(dxC系統:2006年中国徳晶県・徳永により採集)は大豆を含むマメ⽬マメ科の多様な種子だけでなく、ヤマモガシ⽬ハス科ハス、フトモモ⽬ヒシ科ヒシ、キク⽬キク科ヒマワリの乾燥種⼦で多数⽻化する超広⾷性だが、⽇本産アズキゾウムシ(jC系統)はマメ科ササゲ(Vigna)属だけの狭食性を発表した(2018年応動昆大会)。dxC系統とjC系統の雌雄交換の正逆交雑実験の結果では、超広食性は核遺伝⼦に由来する結果を支持し、細胞質因子(共⽣微生物)仮説の却下を報告した(2019年応動昆大会)。F1世代では正逆両⽅の交雑系統ともに広食能力の範囲は半分程度で不完全優⽣となった。同一種なのにこの大きな食性の違いは何に由来するかをさらに解明するため、今回は大豆(スズマル)で飼育したdxC系統と、2006年から大納言アズキ(Vigna属)に戻して175世代以上維持したdxC-AZ系統で羽化数を比較した。その結果、dxC-AZは、大豆の大粒・小粒品種にはともに30匹もの羽化数を示し大豆への広食性を維持したが、ピーナッツ・ヒシ・ハス・ヒマワリからは0~数匹しか羽化できなかった。Vigna属への戻り効果がマメ科以外への食害能力を低下させており、それらへの広食性の衰退は、その植物への食害能力の量的遺伝性やエピジェネティクスも含めて考察したい。