| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-14  (Oral presentation)

ヨツモンカメノコハムシの利用した葉に対するジンガサハムシの産卵数は減少する
The number of eggs laid by Aspidimorpha indica was reduced on leaves eaten by Laccoptera nepalensis

*野村夏希(岐阜大学), 笠井敦(静岡大学)
*Natsuki NOMURA(Gifu Univ.), Atsushi KASAI(Shizuoka Univ.)

一般に, 植物に産卵する植食性昆虫のメスは産卵基質選好性を示す. 含有成分などの植物の質は時期や器官ごとに同一個体内でさえ異なるため, 好適な産卵基質の量はしばしば食草の総資源量より少なくなる. これらのことから, 同じ産卵基質を利用する複数種において産卵基質の選択条件が重複した場合, 互いに好適な産卵基質を十分に利用できなくなるような対立関係の発生が予想される. 日本本土の一部地域では, 食草および活動時期が重複するジンガサハムシ(以下ジンガサ)およびヨツモンカメノコハムシ(以下ヨツモン)というハムシが同所的に見られる. 両種とも成虫および幼虫の餌資源である葉に産卵することから, この2種は産卵基質を巡って対立関係にあることが疑われる. そこで, このハムシ2種を共存または単独条件で飼育した場合の産卵数を比較した. まず, ヨツモンと共存条件にあるジンガサの産卵数は単独飼育のものの約半分だった. 一方で, 利用できる食草の資源量がジンガサのものと同じでありながら, 共存条件におけるヨツモンの産卵数は単独条件のものから約2割の減少にとどまった. 次に, あらかじめヨツモンに産卵させたのち, ヨツモンを除去した食草を与えたジンガサの産卵数もまた単独飼育のものの約半分であり, かつヨツモンが産卵した葉への産卵数は少なかった. なお, 2種ともに相対的に厚さが薄い葉を産卵基質として好み, 初齢幼虫の生存率も厚さが薄い葉で高かった. 以上より, 2種とも幼虫の生存率が高い産卵基質を選好することと, 共存条件では2種ともに産卵数が減少するものの, ジンガサに対する影響がより強いことが示唆された. その原因として, 植物誘導抵抗などによる産卵基質の改変が先行研究より疑われた. なお, ヨツモンはジンガサと異なり食草の葉以外にも産卵することから, 2種共存条件における個体数の抑制はヨツモンのほうがより緩やかかもしれない.


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