| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-01  (Oral presentation)

アリグモはツンデレかー機械学習で擬態者の擬態モデルに対する行動変化を解析する 【B】
Are ant-mimicking spiders tsun-dere? - Using machine learning methods to analyze behavioral changes in mimics in response to mimicry models. 【B】

*橋本佳明(兵庫県立大学), 遠藤知二(神戸女学院大学), 山崎健史(兵庫県立大学), 兵藤不二夫(岡山大学), 市岡孝朗(京都大学)
*Yoshiaki HASHIMOTO,(University of Hyogo), Tomoji ENDO(Kobe College), Takeshi YAMASAKI(University of Hyogo), Fujio HYODO(University of Okayama), Takao ITIOKA(University of Kyoto)

アリ類の種多様性が高い熱帯林では,ハエトリグモ科アリグモ属の高い種多様性が見られる.アリに擬態するアリグモ属の高い種多様性が,擬態のモデルであるアリ類の高い多様性を鋳型として創出されていることは当然予想される.そこで,我々はタイ国の熱帯季節林やボルネオ島の熱帯雨林,さらには熱帯雨林の樹冠層などのアリ類種多様性の異なる場所で,アリグモ属を対象に生物多様性創出・維持機構としてのアリ擬態の研究を行ってきた.その結果,熱帯では,アリグモ属の各種が同所の特定アリ種に外見を正確に似せるアリ擬態が見られること,その正確なアリ擬態が跳躍力や捕獲能力を大きく低下させていること,さらに,その栄養源のほとんどを植物性のものに依存していることを明らかにしてきた.これらのことは,正確なアリ擬態がアリグモ属の成長や繁殖に高いコストをかけている可能性を示している.それにも関わらず,熱帯でアリグモ属が正確なアリ擬態によって種多様性を増大させているのは,その擬態が防衛のためだけでなく,アリ類のテリトリー内で擬態のモデルから攻撃を受けずに,採餌や繁殖を行うためのものではないかと考え,アリグモとその擬態モデル間の行動解析を進めている。本講演では,アリグモの擬態モデル認識の行動解析の結果を報告するとともに,その解析に用いている機械学習を使った行動解析の手法についても紹介する.


日本生態学会