| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-455 (Poster presentation)
本研究では,①植生指標を用いた植生分類の精度が,使用しない場合と比べて向上するかどうか,②ドローン画像において,季節変化が分類精度に寄与するかどうかの2つを検証することを目的とした.調査地は,広島大学東広島キャンパス南部と,その周辺部とした.対象地は広葉樹と針葉樹,竹林,草地などがモザイク状に点在しているため,今回の研究に適した場所であると判断した.ドローンはDJI社のInspire2を,マルチスペクトルカメラはSentera社のMultispectral Double 4Kを使用した.ドローン画像の撮影日は6月,9月,10月,11月で.分類にはArc GIS Proを用い,学習モデルにはSupport Vector Machineを用いて,草地,落葉広葉樹,竹林,常緑広葉樹,アカマツ,針葉樹(スギ,ヒノキ)の6タイプに分類した.その後,精度検証をそれぞれの分類群において10回行い,その平均値の差で分散分析を行うことにより,分類精度の違いを比較した. 植生指標を使用したものは,使用しない場合と比べて,有意差が見られなかった.一方で,異なる季節を組み合わせたドローン画像の分類精度は90%と,最も高くなった.これは,落葉広葉樹のように,季節によって葉の色が変化するとともに,分類精度が大きく変動するが,多時期の画像を組み合わせることにより,チャンネル数が増え,スペクトルの変化を捉えやすくなった結果であると考えた.衛星画像は天候に大きく左右され,特定の時期に画像を取得できないことが多い.しかし,ドローンに搭載可能な光学センサはオンデマンドで画像を取得することができるため,多時期の画像を組み合わせればより高い精度で分類することができる.さらに,開花時期や紅葉など,フェノロジーを考慮すれば,樹種の判別等にも利用できることが期待される.そのため,ドローン画像は季節変化や,小規模の土地利用の変化を追うのにも非常に有用であると考えられる.