| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-456 (Poster presentation)
北東アジアの乾燥地では近年、人口増加に伴う過放牧や不適切な耕作等による土地・植生の劣化が進行している。加えて、限られた降雨やその時間的・空間的不均質性、短期間の夏など、乾燥地特有の自然環境特性が土地・植生の回復を困難にしている。
乾燥地における荒廃草原の修復はこれまで様々な取り組みがなされてきたが、種子を用いての草地修復は変動的な自然環境により生じる課題も多く、成功率は低いとされてきた。一方で、アジアのステップに広く分布するイネ科一年草Chloris virgataは、乾燥などの環境ストレスに耐性を持つことや迅速成長性で知られ、草地の植生回復において有用性が期待されている。C. virgataの生理生態的特性についてはこれまで室内環境下での生育特性やストレス耐性能について多くの研究事例があるが、野外環境下におけ環境応答性や成長特性については未だ不明瞭な点が多い。
そこで本研究では、野外環境下でのC. virgataの発芽・成長特性を把握し、同種による緑化技術開発に向けた基礎的知見を得ることを目的として、播種時期および播種密度を変えた栽培試験を行った。ウランバートルの西部約100km、森林〜典型草原域に位置するフスタイ国立公園南部の荒廃草原において、2021年5月上旬に2m×1mの区画を30区設置し、播種時期については日平均気温により5月中旬〜6月中旬にかけての3段階、播種間隔については2段階(5cm、10cm)の処理区を設定した。繰り返しは5回とし、0.5cmの深さでC. virgata種子を播種した後、10日間隔で成長をモニタリングし、10月上旬に刈り取り調査を行った。本試験の結果に基づき、C. virgataの最適な播種時期および播種密度を検討した。